「雨が降れば、渓流魚の活性が上がる」 釣り人の間では定説のように言われるこの言葉。
しかし、自然相手の遊びにおいて、必ずしもセオリー通りにいかないのが渓流釣りの奥深さであり、難しさでもあります。
今回は、6月11日に行った揖保川支流への釣行レポートをお届けします。
期待していた雨後の爆釣劇…となるはずが、まさかのロッド破損、そして天敵・ヤマビルの襲来。
数々のトラブルに見舞われながらも、そこから得られた「現場での危機管理」や「シビアな状況下でのルアー選択」など、次回の釣行に活かせる気づきを共有したいと思います。
これから渓流に入られる方の参考になれば幸いです。
前回の記事はこちらから。
雨のアマゴ狙い!増水と濁りは吉と出るか?
早朝4時。車のフロントガラスを叩く雨音を聞きながら、私はハンドルを握っていました。
予報では小雨程度のはずが、現地に向かうにつれて雨脚は強まるばかり。
揖保川沿いを北上しながら川の様子を伺いますが、本流はみるみるうちに増水し、カフェオレのような濁りが入っています。
「本流は厳しいな…」
しかし、今回目指すのは三方川のさらに上流、源流域に近いエリアです。
源流域であれば、雨の影響による濁りの回復も早く、むしろ適度な増水が警戒心の強いアマゴのスイッチを入れてくれるはず。
「雨=アマゴ日和」というポジティブな期待を胸に、アクセルを踏み込みました。
渓流釣りにおいて、雨は「先行者がいない(プレッシャーが低い)」「魚の警戒心が薄れる」という大きなメリットがあります。
しかし、同時に「水温低下」や「急な増水のリスク」も孕んでいます。
この日の判断がどちらに転ぶか、この時はまだ知る由もありませんでした。
まさかのトラブル発生!入渓直後の悲劇と予備竿の重要性
ポイントに到着したのは日の出過ぎ。
駐車スペースも広く、入渓しやすい人気のエリアです。

雨に濡れた新緑が美しく、マイナスイオンを全身に浴びながらのスタート。
今日の相棒は、携行性に優れたパックロッド『ZoomSafari 404UL』。
このロッドで、源流のピンスポットへルアーを撃ち込む計画です。
意気揚々と藪を漕ぎ、川へ降りようとしたその時でした。
『ミシッ』
手元から伝わった嫌な感触と乾いた音。
恐る恐るロッドに目をやると、ティップ(竿先)に近い#1のセクションが無残にも折れ曲がっていました。

「嘘だろ…?」 特に強くぶつけたわけでも、転んだわけでもありません。
おそらく、移動中のわずかな負荷の蓄積か、あるいはフェルールの継ぎが甘かったのか。
いずれにせよ、釣り開始0分でのロッド破損です。
頭の中が真っ白になりましたが、幸いだったのは車に戻れる距離だったこと。
そして何より、「予備の竿」を車に積んでいたことです。
もしこれが、車から1時間歩いた山奥だったら?もし予備竿を持っていなかったら?
その時点でこの日の釣行は強制終了でした。
渓流、特に足場の悪い源流域では、転倒や枝への接触によるロッド破損のリスクが常につきまといます。
- 必ず予備のロッド(できればコンパクトなパックロッド)を車に積んでおくこと
- 移動中はロッドをたたむ、あるいはティップカバーを装着すること
この基本の重要性を、痛いほどの代償とともに再確認しました。
皆さんも、愛竿を守るための対策と、万が一のバックアップは万全にしておいてください。
魚影が見えない…?低活性時のルアーアプローチ考察
気を取り直し、予備タックルを手に再入渓。 しかし、ここからが本当の試練の始まりでした。
昨年の同時期に訪れた際は、キャストするたびにアマゴがわらわらとチェイスしてきた実績ポイント。

しかし今日は、ルアーを追う影が全く見当たりません。
「先行者が入った後なのか?」と疑い、足元の砂地や苔を確認しますが、新しい足跡はなし。
クモの巣も張っており、ここ数日人は入っていない様子です。
考えられる原因は3つ。
- 水温の低下: 雨による冷たい水が入り、魚の活性が一時的に下がっている。
- 増水による定位場所の変化: 普段ついている石周りではなく、底の沈み石やえぐれにベッタリ張り付いている。
- 流下物の多さ: 濁りとともに流れてくるゴミを嫌っている。
ミノーのトゥイッチでリアクションバイト(反射食い)を誘いますが無反応。
スピナーでゆっくり底層を引いても音沙汰なし。
「魚がいない」のではなく「口を使わない」状況です。
こうなると、ルアーのサイズを落とすか、カラーを地味にしてナチュラルに誘うか。
あるいは、ルアーの波動を嫌っている可能性も考慮しなくてはなりません。
美しい渓相とは裏腹に、私の腕が試されるシビアな時間が過ぎていきます。
「雨なら釣れる」という固定観念を捨て、その場の状況にアジャストする能力が不足していたことを痛感させられました。
渓流アングラーの天敵「ヤマビル」出現!絶対にしておくべき対策
魚からの反応がないまま小休止していると、ふと足元に違和感を覚えました。
ウェーダーの表面を、尺取虫のように伸び縮みしながら這い上がってくる黒い影。

「出た、ヤマビルだ…!」
吸血生物、ヤマビルです。
湿度の高い雨の日、そして気温が上がってくる6月の源流域は、彼らにとって最高の活動環境。
二酸化炭素や熱に反応し、驚くべきスピードで忍び寄ってきます。
私はヤマビルが大の苦手。
過去に何度も吸血被害に遭っており、あの血が止まらない恐怖と、張り付かれた時の不快感はトラウマレベルです。
慌ててデコピンで弾き飛ばしましたが、一匹いれば周囲に数十匹潜んでいるのがヤマビルの恐ろしさ。
これから暖かくなる季節、源流域に入られる方は以下の対策を強くおすすめします。
- 忌避剤(ディート入りスプレー等)の散布: 足元、特にシューズとウェーダーの隙間に入念に吹き付ける。
- 塩水の携行: 高濃度の塩水をスプレーボトルに入れて持ち歩く(ヒルにかけると脱水して落ちます)。
- 肌の露出をゼロにする: どんなに暑くても、スパッツやラッシュガードで肌を覆うこと。
精神的なダメージを受けつつも、彼らとの遭遇は「豊かな自然の中にいる証拠」と言い聞かせ(半分はやせ我慢ですが)、釣りを続行しました。
待望のアマゴと対面!源流域のサイズ事情
開始から1時間以上経過し、ようやく魚影を確認できるエリアに到達しました。
ルアーを『ARスピナー』に変更。
着水と同時にブレードが回転し、短い移動距離でも強烈にアピールできる、源流釣りのファイナルウェポンです。
アップクロス(上流側)にキャストし、岩陰を通した瞬間、手元に「ブルルッ」という小気味よい感触!
慎重にネットインしたのは、パーマークが美しいアマゴ…ですが、サイズは手のひらに収まるミニマムサイズ。

「やっと会えたね、でも小さい…」
その後もヒットは続きますが、釣れてくるのは全て同サイズ。
いわゆる「赤ちゃんサイズ」ばかりです。


源流域の最上流部は、大型の個体が遡上しにくいのか、あるいはエサの競合が激しいためか、小型が密集している傾向があります。
もちろん、このサイズの魚をキープすることは資源保護の観点からもしません。
濡らした手で優しく触れ、すぐにリリース。
「大きくなって、また遊んでくれよ」 数が出てもサイズが伸びない。
これはこれで、場所選びの難しさを突きつけられた結果となりました。
場所移動の決断と、引き際の美学
「このまま登り続けても、サイズアップは望めないかもしれない」
そう判断し、思い切って大きくポイントを移動することに。
車を走らせ、別の支流の下流域へエントリーし直しました。

しかし、結果は残酷なほど同じ。
掛かるのは可愛いサイズのアマゴばかり。里川エリアでも状況が変わらないということは、やはり今日という日が、良型にとってご機嫌斜めな日だったのかもしれません。
時刻は昼過ぎ。
雨で濡れた体は冷え、体力も限界に近づいていました。
「粘れば奇跡の一匹が出るかもしれない」という淡い期待と、「これ以上やっても無駄だ」という冷静な判断。 釣り人なら誰もが経験する葛藤ですが、今回はここで納竿としました。
無理をして集中力が切れた状態での渓流釣りは、転倒や遭難のリスクを高めます。
潔く撤退するのも、長く釣りを楽しむための「技術」の一つです。
釣行まとめ:ルアーの限界と次なる一手
今回の釣行は、ロッド破損に始まり、ヤマビルとの遭遇、そして良型不発と、ほろ苦い結果となりました。
しかし、だからこそ得られた教訓も多くあります。
- リスク管理の徹底: 予備ロッドの携行は必須。現場でのトラブル対応力が釣果を分ける。
- 状況判断の重要性: 「雨=釣れる」という思い込みを捨て、水温や魚の着き場を冷静に分析する必要がある。
- 自然への畏敬: ヤマビル対策や小型魚のリリースなど、フィールドを守り、自分を守る行動を忘れない。
ルアーフィッシングの手軽さとゲーム性は魅力的ですが、今回のようなタフなコンディションでは、「エサ釣り」の強さを改めて感じざるを得ません。
川虫を流せば、違った反応が得られたのではないか? そんな仮説を検証するため、次回は初心に帰り、延べ竿での「本気の餌釣り」で良型アマゴに挑みたいと思います。
自然は時に厳しく、思い通りにはさせてくれません。
だからこそ、たった一匹の価値ある魚に出会えた時の感動はひとしお。
これに懲りず、また揖保川の美しい渓流に立ちたいと思います。
皆さんも、雨の日の釣行は安全第一で、そして予備のロッドを忘れずに楽しんでくださいね!




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