「雨が降った後の渓流は釣れる」 釣り人なら一度は耳にしたことがある、この定説。
川の水が増え、濁りが入ることで魚の警戒心が薄れ、エサが流れてくるのを待つ魚たちの活性が一気に上がる――いわゆる「リセット」された状態への期待です。
しかし、実際のフィールドはそう単純ではありません。
増水による危険、仕掛けが馴染まない激流、そして予想外の魚の反応…。
今回は、2023年4月中旬、前日の雨によりコンディションが大きく変化した兵庫県・揖保川水系へ釣行。
高活性のアマゴを求めて支流と本流を巡った、リアルな実釣レポートをお届けします。
「雨の日は本当に釣れるのか?」「増水時の攻略法は?」そんな疑問を持つ渓流アングラーの参考になれば幸いです。
前回の釣行記事は下記URLからどうぞ。
【ポイント選定】雨後の増水時は「支流」か「本流」か?迷った末の決断
雨上がりの朝、期待と不安が入り混じる中でポイント選びが始まりました。
この日の揖保川水系は、前日の雨の影響で水量がかなり増している状況です。
ここで釣り人が直面する最初の選択肢は2つ。
一つは、一発大物の夢がある「本流」。
もう一つは、比較的安全に釣果が見込める「支流」です。
- 本流のメリット・デメリット:
水量が増えれば、普段は警戒心の強い大型のアマゴ(幅広アマゴ)やサツキマスが動き出すチャンス。しかし、元々水量の多い本流が増水すると、遡行(川歩き)が困難になり、最悪の場合、命に関わる危険性があります。 - 支流のメリット・デメリット:
本流に比べて増水の影響がマイルドで、釣りが成立しやすいのが特徴。ただし、同じ考えを持つ釣り人が集中しやすく、プレッシャーが高まる可能性があります。
「どこも釣れそうなら、一発狙いで本流か? それとも新規開拓の支流か?」 かなり悩みましたが、人間、迷った時ほど「安定」を選んでしまうもの。
結局、解禁日にも訪れ、勝手知ったるいつもの支流へ足が向きました。
まずは確実に魚の顔を見て、状況を把握してから次の手を考える作戦です。
【実釣開始】雨の恩恵でアマゴは高活性!しかし「チビの猛攻」への対策

入渓地点に立つと、予想通り水量はかなり多め。
普段は穏やかな流れの場所も、今日は白波が立って轟音を立てています。
「これは仕掛けを馴染ませるのが難しそうだ…」 そう感じた私が選んだのは、雨後の定番エサである「ミミズ」です。
なぜ雨後はミミズが最強なのか?
普段の澄んだ水ではブドウ虫や川虫(カゲロウの幼虫など)が効果的ですが、雨で濁りが入った時はミミズが圧倒的な強さを発揮します。
- 匂い: 濁った水の中でも、ミミズ特有の匂いが魚を寄せ付けます。
- シルエット: 太いミミズは視認性が高く、増水した流れの中でも魚に見つけてもらいやすいのです。
- マッチ・ザ・ベイト: 雨で土砂が川に流れ込む際、実際にミミズも流下してくるため、魚が捕食モードに入っています。
この選択が功を奏し、釣りを始めてすぐに反応がありました。
目印がギュン!と一気に引き込まれる、明確で激しいアタリ。
竿を立てると、小気味よい引きが手元に伝わります。

しかし、上がってきたのは14cmほどのかわいいアマゴ。
いわゆる「おチビちゃん」サイズです。
その後も、どこへ仕掛けを投入しても、すぐにこのサイズが猛アタックしてきます。
「来た!…あ、また小さい」 「今度こそ!…やっぱり小さい」



魚体はヒレもピンと張った美しい天然のアマゴなのですが、狙っているのは20cmオーバーの塩焼きサイズ。 どうやら雨の影響で川全体のエサが増え、小型のアマゴまでもが狂ったようにエサを追っているようです。
支流のアマゴたちはどれも腹パンパンに肥えており、揖保川の豊かな生態系を感じさせますが、釣り人としては贅沢な悩み。
「数釣り」は楽しいものの、サイズアップが課題となってきました。
【サイズアップ攻略】良型アマゴが潜むポイントの見極め方
「同じようなポイントを流しても、同じサイズしか釣れない」 そう判断し、釣り上がりながら狙うポイントを少し変えてみることにしました。
小型のアマゴは動きが俊敏で、比較的流れの緩い浅瀬や、エサが流れ込みやすい瀬の肩などで積極的に食ってきます。
一方で、警戒心の強い良型は、もう少し身を隠せる場所に潜んでいるはずです。
私が目をつけたのは、普段は水量が少なくてスルーしてしまうような、小さな落ち込み(滝)のあるポイント。 増水のおかげで、今日は十分な水量と深さが確保されており、白泡が立って魚の隠れ家(シェード)を作っています。

「ここなら、良型が付いているかもしれない」 白泡の切れ目、底波に乗せるイメージでミミズを慎重に送り込みます。
すると、先ほどまでのひったくるようなアタリとは違う、「モゾッ」とした重みのあるアタリが目印に出ました。
すかさずアワセを入れると、竿が美しい弧を描きます。
上がってきたのは19cmのアマゴ! やっとまともなサイズに出会えました。

面白いことに、先ほどまでの太った小型魚とは違い、この個体は少しスマートな魚体。
同じ川でも、居着く場所によって魚のコンディションが違うのも渓流釣りの奥深さです。
この「白泡の下」「少し水深のある落ち込み」というパターンで攻めることで、ポツポツとキープサイズを拾うことができるようになりました。

【本流の洗礼】増水した三方川本流の現実と「撤退する勇気」
時刻は午前9時頃。
支流での反応も落ち着き始め、先行者の車も見かけるようになったため、思い切って場所移動を決意しました。 「支流でこれだけ高活性なら、本流の幅広アマゴもスイッチが入っているはず」 そんな期待を胸に、揖保川の大きな支流の一つである三方川の本流へ向かいます。
しかし、川を覗き込んだ瞬間、その甘い考えは吹き飛びました。
「これは…激流だ」

普段の美しい渓相はそこになく、茶色く濁った水が凄まじい勢いで流れています。
ウェーダーを履いていても、一歩間違えて足を取られれば、そのまま流されてしまうレベルの水圧です。
渓流釣りにおいて「死」のリスクを感じる瞬間です。
それでも、安全な岸際から竿を出してみますが、仕掛けはあっという間に下流へ流され、底を取ることすらままなりません。
魚がいるいない以前に、釣りが成立しない状況でした。
上手い人なら釣るのかもしれないが、今の自分には危険すぎると判断しました。
渓流釣りで最も大切なテクニックは、キャストの精度でも仕掛けの流し方でもなく、「撤退する判断力」です。 無理をして事故を起こしては元も子もありません。
本流での釣りは諦め、朝入った支流の別区間に戻って残りの時間を楽しむことにしました。
これから渓流釣りを始める皆さんも、雨後の増水時は決して無理をせず、自分の技術と装備に見合った場所を選んでください。
【釣行まとめ】雨後パターンの教訓と揖保川周辺グルメ情報
最終的に、この日の釣果は合計24匹。
数だけ見れば「爆釣」と言える数字ですが、持ち帰りサイズ(キープ)は4匹にとどまりました。
今回の釣行で得た雨後パターンの教訓としては下記のとおり。
「雨後は確実に魚が動く」
小型も含めて活性は非常に高く、ボウズ(0匹)のリスクは低い。
「サイズ・セレクティブの難しさ」
高活性時は小型が先にエサに飛びついてくるため、良型を釣るにはポイント選び(深場や白泡の中)の工夫が必要。
「本流はハイリスク・ハイリターン」
雨後の本流は夢があるが、増水のレベルによっては釣りにならないため、事前の水位確認や現場での即断即決が不可欠。
さて、釣りのもう一つの楽しみといえば、地元のグルメです。
今回は、数年ぶりに訪れた『お食事 処兵衛』さんへ。
一見すると営業しているか分かりにくい外観ですが、暖簾をくぐれば落ち着いた空間が広がっています。

注文したのは「天ぷら定食(1,200円)」。

サクサクの衣に包まれた揚げたての天ぷらは、早朝から川を歩き回ってペコペコになったお腹に染み渡ります。ボリュームも満点で、冷えた体も心も温まりました。
揖保川水系への釣行の際は、ぜひ立ち寄ってみてください。
さて、これから季節は進み、新緑が眩しい最高のシーズンに入ります。
5月までは少し忙しく釣りはお預けになりますが、次こそは本流の水が落ち着いたタイミングを見計らって、夢の幅広アマゴ、そして尺イワナを狙いたいと思います。
皆さんも、安全第一で、雨上がりのエキサイティングな渓流を楽しんでみてはいかがでしょうか?




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